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強豪ホビーレーサー・増田菜穂子の
秘密に迫る〜オレのポジション〜

本連載初の女性ライダーは、2019年「Mt.富士ヒルクライム」(以下富士ヒル)の女子選抜クラスで2位に入った増田菜穂子さん。ロードバイクを始めてわずか1年で、初参加した富士ヒルでいきなり優勝してしまった経歴の持ち主だ。しかし、その裏には非凡な努力があった。女性最強クライマー候補のポジションとトレーニングとは?

photo:滝沢佳奈子

増田菜穂子さん

プロフィール

増田菜穂子さん
増田菜穂子さん

増田菜穂子(ますだ・なおこ)。2017年、兄の影響によってロードバイクに乗り始める。2018年6月には、初参加の富士ヒルで、初出場にして女子総合優勝。2019年大会は女子選抜クラスで2位。

- 主な戦績
2018年 Mt.富士ヒルクライム 年代別(19〜34歳)女子優勝
2019年 Mt.富士ヒルクライム 主催者選抜クラス女子2位

「負けず嫌い」を力に富士山の頂点を狙う

増田さんが自転車を始めたのは、ホビーレーサーだったお兄さんの影響だった。お兄さんが増田さんに、家にあるローラー台に乗るよう勧めたことがきっかけだという。

増田さんは根っからの文化系。スポーツ経験はほとんどなく、高校生までは演劇に打ち込み、大学では料理研究会に所属していた。そんな増田さんにとって、初めてのロードバイクは新鮮だったらしい。すぐにお兄さんと自転車ショップに行き、アルミのロードバイクを手に入れた。2017年4月のことだ。

当時の増田さんの住まいは埼玉県の荒川近く。早速お兄さんと荒川サイクリングロードに走りに出た増田さんだが、まったくお兄さんについていけない。「私が遅かったせいか、『次からは一人で走ってね』と言われてしまったくらいです」。

この言葉が負けず嫌いの増田さんに火をつけた。以降、増田さんは毎週末を荒川で過ごすようになる。「河口まで往復すると90㎞くらいだったんですが、そのルートを毎週土曜日と日曜日に走りました」。

実は増田さんは、小学校のマラソン大会では毎回10位以内に入っていたほどの実力の持ち主。ロードバイクと出合ったことで、忘れていたエンデュランス魂に火がついてしまったということだ。そのうち、埼玉県で有名な白石峠を走ったことをきっかけに増田さんはヒルクライムに魅了される。「白石峠のQOM(クイーン・オブ・マウンテン)をとりたくなりました。負けず嫌いですから(笑)」。週末の荒川でのロングライドだけでも毎週180㎞もの距離になるが、それだけでは足りない。「もっと本気で走ろうと思って、平日もローラー台に乗りはじめました」

その効果はすぐに出た。ロードバイクに乗りはじめて1年足らずの2018年6月、初参加のMt.富士ヒルクライムで増田さんは、何といきなりの女子総合優勝を果たしたのだ。その頃の体重は44㎏ほどで、FTPはおよそ220W。つまり、たった1年のトレーニングで、パワーウェイトレシオは5倍に達したということだ。

フィジカル 〜シッティングでのアベレージ走が中心〜

増田さんの体型
増田さんの体型(左)と柔軟性をチェックするために立位前屈してもらった様子(右)

【フィジカルデータ】
●身長/159cm
●体重/43kg(ベスト時。現在は48〜49kg)
●FTP/210〜220W(実戦時。ローラー台だと約190W)
●最大出力/500〜600W
●脚質/クライマー

増田さんのフィジカルは典型的なヒルクライマーだ。FTPなど長めの領域の一定ペース走は強いが、インターバルは得意ではない。「インターバルは苦手ですね。だから、インターバルがかかるロードレースは一度出たっきりです」。

また、ヒルクライムで中心となるシッティング以外のフォームにも苦手意識があるという。スプリントでの最高出力は500Wほどだ。「ダンシングができないんです。ダンシングからシッティングに戻すときに、パワーが落ちてしまうのが嫌だからです。ただ、今はレースでマークされるようになったので、ライバルを振り切るためにはダンシングでの短時間のパワーも必要だと思いはじめています」。

寝る前のストレッチの効果もあり、身体の柔軟性は高い方。ただし、バイクのステムを下げて低いポジションにしているのは、格好良いからでもある。「空力が良いこともありますが、見た目も大事だと思っています。やはり、格好良く走りたいですからね」。

バイク 〜エアロフレームだが乗りやすい〜

増田さんのバイク
増田さんのバイク

【主なポジショニングデータ】
●サドル高/644mm
●サドル後退幅/16mm
●サドル先端-ハンドル基部/460mm
●ハンドル-サドル落差/64mm
●クランク長/167.5mm(決戦時は165mm)
●ステム長/100mm
●ハンドル幅/380mm(芯-芯)
●ギヤ/F:50-34T、R:11-30T
●タイヤ幅/28mm(決戦時は23〜25mm)
●空気圧/前後7bar(チューブレスのとき)、前後8〜8.5bar(クリンチャーのとき)

【SPEC】
●フレームセット/チポッリーニ・ボンド2
●メインコンポーネント/シマノ・デュラエースR9170
●ホイール/マヴィック・キシリウムプロカーボン
●タイヤ/マヴィック・イクシオンプロUST 700×28C
●ハンドル/デダエレメンティ・ゼロ1ドロップバー
●ステム/デダエレメンティ・ゼロ100ステム
●サドル/セライタリア・SP01
●シートポスト/フレーム専用品
●ペダル/シマノ・PD-R8000
●パワーメーター/パイオニア・SGY-PM930H
●サイクルコンピュータ/ガーミン・エッジ520J

増田さんのバイクは、チポッリーニ・ボンド2。かつての名スプリンター、マリオ・チポッリーニの名前を冠したエアロバイクだ。ヒルクライマーらしからぬセレクトに思えるが、「同じチポッリーニのヒルクライム向きのMCMよりも、こちらの方が乗りやすかったんです。剛性があるのがいいですね」。

軽量化に力を入れているのはクライマーらしい。レース用ホイールをマヴィック・キシリウムプロカーボンにしたり、シューズをレイク・CX301にしているのも軽量化のためだし、以前はスプロケットが重くならないように小さな歯数を選んでいたくらい軽量化へのこだわりは強い。ペダルも軽いタイムにしたいところだが、落車が多い増田さんは壊れることを嫌ってシマノを選んでいる。

チューンナップで目を引くのはカーボンドライジャパンから供給されているビッグプーリーだ。その効果は大きく、特ににアウター×ローにかけたときの軽さはビッグプーリーなしの走りを考えられないほどだという。

軽さを追求する増田さんだが、決して軽くはないエアロフレームを選んだことに後悔はない。「もっと軽い自転車はありますが、何よりもこのバイクの見た目が好きなんです。好きな自転車でなければモチベーションは上がりません」

カーボンドライジャパンから供給されているビッグプーリー。「アウター×ローにしたときにすごく軽くなります。ビッグプーリーなしはもう考えられません」
平地よりも上りを意識し、ポジションは前乗り。サドルも前に出している。やや前上がりになっているのも上りのためか
コラムスペーサーは全て抜き、さらに角度の大きいステムを選んでハンドルを下げている。「空力もありますが、見た目も格好いいので低めが好きです」
シューズはレイク・CX301。これも、選ぶ決め手になったのは軽さだった

フォーム 〜呼吸のしやすさを意識する〜

ブラケットリラックスフォーム
ブラケットリラックスフォーム
ブラケットエアロフォーム
ブラケットエアロフォーム
下ハンドルディープフォーム
下ハンドルディープフォーム

増田さんの上りのフォームの特徴は、上半身が立っていること。呼吸を楽にするためだ。ハンドルは、上りではトップを握るが、平地や下りでは一転して空力を意識した低いフォームになる。「下ハンドルを持つことはまずないですが空気抵抗を減らすようにはしています」。また、増田さんの特徴の一つに、高いケイデンスがある。「脚のトルクが弱いので、ケイデンスを上げることで補っています。上りでも80回転は上回りますね」。

走りの特徴 〜狙いを絞ってメリハリをつける〜

増田さんの登坂時の特徴
増田さんの登坂時の特徴

目標とするレースを、ほぼ富士ヒル一本に絞っている増田さん。したがって走りも富士ヒルに特化させている。上体が起きたフォームや脚のトルクの弱さをカバーする高ケイデンスの走りなどだ。だが同時に、増田さんがこだわるのが「格好良さ」。ヒルクラマーらしからぬエアロバイクのチョイスや低めのポジションはスタイルを重視した結果でもある。

トレーニング 〜TSSは週700超え!〜

増田さん

6月の富士ヒルクライムが終わると自転車からは離れるという増田さん。再び乗り始めるのは10月後半からだ。増田さんのシーズンは8か月ほどということになるが、その中身は濃厚。「平日はローラー台でのSST(スイートスポット)走を中心。週末は、土日は山を含む150㎞~200㎞ほどのロングです」。週あたりのTSSは700を超えるという。

生活 〜オフシーズンは食べまくる!〜

6月の富士ヒルクライムから秋にかけては、増田さんのオフシーズン。好きな食べ物を好きなだけ食べられる時期だ。「食べることが好きなので、自分でケーキを焼いたりもしますね。オフは自転車はもちろん、他の運動もゼロ。好きなものを好きなだけ食べる生活です。そんな生活を送っていると、10月くらいに自転車に乗りたくなるんです(笑)」

コンディショニング 〜「女性だから」が嫌い~

運動経験がなく、食べることが好きな事務職の女性。そんな増田さんだが、毎年秋~翌年6月にかけてはストイックな強豪ヒルクライマーに生まれ変わる。「シーズン中はたんぱく質を取るために、胸肉で作る“鳥ハム”ばかり食べています」。

注意するのは日常の食事だけではない。「お酒も大好きですが、シーズン中は飲みません。やはり好きなコーヒーも、シーズン中は絶ちます。あと、プロテインと一緒にBCAAやアミノ酸のサプリも取りますね」。

そのモチベーションは、負けず嫌いな性格にあるという。「“どうせ女なんだから……”と言われるのが嫌なんですよ。だから、シーズン中は頑張れるんです」。

コンディショニングにおすすめのアミノ酸サプリ

BCAAやアミノ酸のサプリを取っているという増田さん。そうしたものの中で、自転車乗りにおすすめなのはどんなものがあるのか。

代表的なのは味の素・アミノバイタル®シリーズだ。その中でも、増田さんのようにトレーニングと合わせて摂取するのにおおすすめなものとしては、次の2つがある。ぜひ試してみよう。

アミノバイタル®プロ

アミノバイタル®プロ スポーツ時に大切なアミノ酸(体では作ることのできない9種類の必須アミノ酸+シスチン、グルタミン)3800mgと8種類のビタミンが口どけの良い顆粒状で飲みやすく摂取できる。
●参考価格/1450円(7本入り箱・税抜) photo:アミノバイタル

アミノバイタル®GOLD

アミノバイタル®GOLD ロイシン高配合BCAAなど、必須アミノ酸4000mg配合の最先端スポーツサプリメント。顆粒タイプで携行に便利で、トレーニング後やレース後サッと取り出して飲みやすい。
●参考価格/3124円(14本入箱・税抜)

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